「スマイル0 円」が日本のマニュアルのスタート
マニュアルという概念が日本に入ってきたのは、ファストフード店の代表格ともいえるマクドナルドからだといわれています。
1971年(昭和46年)、東京・銀座の三越1階に日本第1号店をオープンしたマクドナルドは、調理方法から接客にいたるまで、手順やサービス内容を事細かに定義したマニュアルを持ち込みました。
マクドナルドのシステムが画期的だったのは、食品でありながら、工業製品と同様の発想で、高品質と低コストを両立させた点でした。「合理的な生産と消費」という、これまでにないシステムに出会った日本のサービス業は、こぞってマニュアルによるスタッフ教育を取り入れるようになりました。マクドナルドはハンバーガーを日本の日常食にしただけでなく、「スマイル0円」という表示に象徴される、徹底したマニュアル化という文化ももたらしたわけです。
マニュアルどおりに動けば、誰でも一定レベルの仕事をこなすことができる。経営者としては人材育成がしやすくなるうえ、品質やサービスの均一化が図れる。従業員としても、作業の手順で迷ったり、悩むこともなく、短時間で仕事を覚えられる。そんなメリットがあります。
いつ、どこの店舗に行っても、同じ味のものを食べられて、同じサービスを受けられるという、消費者にとってのメリットもあるでしょう。
ちなみに、マニュアル導入の先駆者であるマクドナルドは、人材育成に非常に力を注いでいます。社内に「ハンバーガー大学」という教育部門を設け、社員はそこでマネジメントスキルやリーダーシップ、コミュニケーションなどを学びます。その充実したカリキュラムによって、仕事面だけでなく、人間的な面でも成長できるシステムが整っているのです。
マクドナルドのマニュアルは、「ただハンバーガーを売るためのもの」ではなく、同社のそうした企業姿勢も盛り込まれた重要な接客ツールと言えるでしょう。