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みなさんは「マニュアルとは何か?」と聞かれたら、なんと答えますか?
「基準書」「仕様書」「手順書」「説明書」「ルール」「ガイドライン」「テクニック集」
多くの人はそんなふうに答えるんじゃないでしょうか。
中には、一歩踏み込んで、具体的な仕事の場面を想像し、「単純作業」や「定型業務」について書かれているもの、と答える人もいるかもしれません。

「マニュアル」という言葉を辞書で引くと、
①機械・道具・アプリケーションなどの使用説明書。取扱説明書。手引き書
②作業の手順などを体系的にまとめた冊子の類
③操作などが、手動式であること。「マニュアル車」
と定義されています。(デジタル大辞泉/小学館より)
ここで取り上げるマニュアルは①と②についてですが、
みなさん、言葉の意味としては正しく理解されているようです。

では、マニュアルそのものについてはどう思いますか?

おそらく、たいていの人はあまりいい印象を持っていないでしょうね。
そのことをよく表しているのが、「マニュアル人間」という言葉です。

たとえば、誰かを指して「あいつはマニュアル人間だからな」と言う場合、
そこには必ず「マニュアルに書いてあることしかできない」「機転が利かない」「独創性がない」「人間味が感じられない」
といった否定的な意味が含まれています。
この言葉が使われるときには、マニュアルの存在が“ダメなもの”であることが前提となっているわけです。

弊社でも、これまでにマニュアル導入を決めた企業へ伺った際、
社員の方から「僕らをロボットにする気ですか!」とか、
「マニュアルで縛られたら、窮屈になって仕事の自由度が減ってしまう」
というように、明らかに拒絶的な反応をされたことがあります。

要するに、世間一般では、マニュアルは圧倒的にネガティブなイメージで認識されているわけです。

ファストフードやコンビニの接客態度のことを、
よく「マニュアル対応」や「マニュアル的接客」と言ったりします。
この言葉からは、
「ただ、『いらっしゃいませ』を言えばいいわけじゃないだろ」
「全然心がこもってないよ」
というように、店員の形式的な接客態度に不満を持った人たちの声が感じられます。

マニュアルに書かれているから、形だけ「いらっしゃいませ」や「ありがとうございます」と言う。
お弁当を買った人には、温めが必要か、お箸を入れるかどうかを機械的に聞く。

そこには接客する人の意思や感情は何も入っていません。

マクドナルドのマニュアルで、「質の高い接客」の象徴のはずだった「スマイル0円」は、
こんなマニュアル的接客が増えたせいで、今ではマニュアル化のマイナス面を語る際に、“ネタ”的に使われる言葉に成り下がってしまいました。

でも、これはマニュアルの存在そのものが悪いわけではありません。
働く人の思考を停止させるようなマニュアルの内容が悪いんです。
あるいは、その組織のマニュアルの使い方が下手なだけなんです。

そして、残念なことに、世の中の多くの企業や経営者、そしてそれを使う側の従業員がマニュアルに負のイメージを抱くことになり、マニュアルの価値をチープなものにしてしまっているわけです。